SDGs(持続可能な開発目標)とMDGs(ミレニアム開発目標)はどう違うのか

2015年、国連サミットにおいてSDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。SDGsは、2000年の国連サミットで合意されたMDGs(ミレニアム開発目標)に代わる、国際社会の新しい共通目標です。

SDGsとMDGsはどのような違いがあるのでしょうか。見ていきましょう。

MDGs(ミレニアム開発目標)ができるまで

2000年9月に開催された国連ミレニアム・サミットにおいて、21世紀に向けた国際社会の目標として、安全で豊かな世界を作るための「国連ミレニアム宣言」が採択されました。

国連ミレニアム宣言に、1990年代に採択された国際開発目標を統合して作られたのがMDGsです。MDGsは、2015年までに貧困や飢餓、差別の撲滅など8つの目標と、より具体的に示した21のターゲット、そして進捗状況を測るための60の指標が定められました。

達成期限となった2015年、MDGsの達成状況が報告されました。8つの目標の中で、最もよい成果を出したのが「目標1.極度の貧困と飢餓の撲滅」といわれています。

達成状況を示した報告書によれば、開発途上国では1990年に人口の47%が1日1.25ドル未満で生活していたが、2010年には22%、2015年には14%まで減少したとし、1990年から2015年の間に、10億人以上が極度の貧困から脱却したと報告しています。また、開発途上地域における栄養不良人口の割合がほぼ半減したとも報告しています。

一方で、サハラ以南のアフリカ地域の人口の41%がいまだ極度の貧困状態にあるとされ、課題は残されたままとなりました。

その他の目標については、目標を達成できたものもあれば、できなかったものもありますが、全体としては、改善の方向へ進んだケースが多く見られ、一定の評価を得ることができました。

SDGs(持続可能な開発目標)ができるまで

MDGsの発効から10年が経過して、いくつかの問題が浮き彫りになってきました。

  • MDGsが策定以降の世界情勢の変化の中で顕在化した課題に十分対応しきれていない
  • 策定プロセスが、ドナー(援助国・機関)や国連の専門家主導のトップダウンである
  • 設定指標がマクロ経済指標であるため、国内格差に目が届いていない
  • 各国・地域の事情に配慮せず、全ての国に同一の達成レベルを設定しているため、初期条件の低い国に何らかの進展があっても失敗とみなされてしまう

これらの問題を解決するために、各国から新たな目標の策定を求める声が高まってきました。その中心的な役割を果たしたのが、国連持続可能な開発会議(リオ+20)や30か国によるオープンワーキンググループ(OWG)、持続可能な開発に必要な資金を議論するための政府間委員会(ICESDF)などです。

次期目標(後のSDGs)では、目標数や対象国、目標値の設定、策定プロセスなどを大幅に見直すことになりました。

SDGsとMDGsの比較

SDGs MDGs
目標数 17 8
ターゲット 169 21
指標 232 60
対象 途上国、および先進国 途上国
目標値の設定 世界全体の達成目標を考慮し、国・地域レベルでのターゲット設定を推奨 国・地域ごとの状況や多様性は勘案されず
指標は国・地域レベルで補完 全世界共通の数値
策定プロセス 加盟各国の交渉によるボトムアップ 国連の専門家主導のトップダウン

参照:近年の国際開発目標をめぐる動向 ―MDGs から 2030 アジェンダへ―(国立国会図書館)

MDGsからSDGsへ

2015年9月、国連サミットにおいて、誰1人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の国際目標が全会一致で採択されました。SDGs(持続可能な開発目標)の誕生です。SDGsとMDGsを比べると、SDGsの扱う範囲が広いことがわかります。

SDGsとMDGsの目標の比較

SDGsの目標 MDGsの目標
1 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる 1 極度の貧困と飢餓の撲滅
2 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する 4 乳幼児死亡率の削減
5 妊産婦の健康の改善
6 HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止
4 すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する 2 普遍的初等教育の達成
5 ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う 3 ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
6 すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する 7 環境の持続可能性の確保
7 すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する
9 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
10 各国内及び各国間の不平等を是正する
11 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
12 持続可能な生産消費形態を確保する
13 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する 8 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進