2018年に高校の学習指導要領が改訂され、新しい教科や科目が誕生しました。その中の1つに「理数探究」の科目があります。学習指導要領では、理数探究は「さまざまな事象に関わり、数学的な見方や考え方、また理科の見方や考え方を組み合わせるなどして、探究の過程を通して課題を解決するために必要な基本的な資質や能力を育成する科目」と規定しています。
理数探究の科目について詳しく見ていきましょう。
理数探究の授業で扱うテーマ
理数探究の授業で扱うテーマの例をいくつか紹介します。これらのテーマは、スーパーサイエンスハイスクールなどが課題研究として取り上げたものです。
- 自然事象や社会的事象に関すること
ダンゴムシの交替性転向反応はどのようにして起こるか
酸性〜塩基性でムラサキキャベツ液の色を鮮やかに変化させる色素の成分を調べる
筒をのぞくと見える不思議な模様を調べる - 先端科学や学際的領域に関すること
銅樹のフラクタル成長の規則性を調べる
周期的に色の変化を繰り返す化学反応について調べる - 自然環境に関すること
マツの葉の汚染率は空気中のちりの量の指標となるか
新生代第四紀の地層から産出する化石を用いて、当時の環境を明らかにする - 科学技術に関すること
風洞装置を使って紙飛行機の揚力について調べる
窓の熱伝導によって夏の夜間の室温を効率的に下げる方法を探る - 数学的事象に関すること
金平糖の角の形成過程の数理モデルを作成する
新たな二項演算を見いだす
参照:理数探究の事例イメージ(文部科学省)
理数探究で育成される資質や能力
理数探究の授業では、学習過程においてさまざまな知識や技能、思考力などを育成していくことが望まれます。文部科学省の教育課程部会では、理数探究学習で育成すべき資質や能力について次の点を挙げています。
1. 知識や技能
- 探究的な活動を自ら遂行するための知識・技能
例:研究テーマの設定方法
先行研究の調査方法
研究計画の立案方法
研究の進め方
データの処理、分析
研究成果のまとめ方
研究成果の発表方法
についての知識・技能 - 既に有している知識・技能の活用及び探究を通じて得られる内容に関する知識や探究に関する技能
- 探究を通して新しい知見を得る意義についての認識
- 研究倫理(生命倫理等を含む。)についての基本的な理解
2. 思考力・判断力・表現力等
- 教科・科目の枠にとらわれない多角的、複合的な視点で事象をとらえ、科学的・数学的な課題として設定することができる力
- 科学的な見方・考え方や数学的な見方・考え方を豊かな発想で活用したり、組み合わせたりできる力
- 多様な価値観や感性を有する人々との議論等を積極的に行い、それを基に多面的に思考する力
- 探究的な学習を通じて課題解決を実現するための能力
例:観察・実験デザイン力
構想力
実証的に考察する力
論理的に考察する力
分析的に考察する力
統合的に考察する力
文章にまとめる力
発表・表現力
3. 学びに向かう力、人間性等
- 様々な事象に対して知的好奇心を持って科学的・数学的にとらえようとする態度
- 科学的、数学的課題や事象に徹底的に向き合い、考え抜いて行動する態度
- 見通しを立てたり、振り返ったりするなど、内省的な態度
- 新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦しようとする態度
- 主体的・自律的に探究を行っていくために必要な研究に対する倫理的な態度
参照:数学・理科にわたる探究的科目の在り方について(文部科学省)
理数探究の授業における生徒の評価方法
理数探究の授業を通じた生徒への評価は、成果はもとより、探究の過程における生徒の行動内容に目を向ける必要があります。理数探究の評価は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3項目に関するCAN-DOリストを参考にするとよいでしょう。
知識・技能に関するCAN-DOリスト
- 探究的な活動を自ら遂行するための知識及び技能や、研究倫理にかかわる基本的な知識を身に付けている。
思考・判断・表現に関するCAN-DOリスト
- 多角的、複合的な視点で事象をとらえ、科学的・数学的な課題として設定することができる。
- 多様な価値観や感性を有する人々との議論や探究的な学習を通して課題を解決することができる。
主体的に学習に取り組む態度に関するCAN-DOリスト
- 様々な事象に対して知的好奇心をもって科学的・数学的にとらえようとしたり、新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦したりしようとする。
- 科学的、数学的な課題や事象に徹底的に向き合い考え抜こうとする。
- 問題解決の過程において、見通しを立てたり振り返ったりして主体的に探究を行おうとする。