高等学校における探究学習科目「総合的な探究の時間」では、探究の見方や考え方を働かせて、横断的、総合的な学習を行うことを通して自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を育成することを目指しています。
高校生にとって、探究力を育成する「総合的な探究の時間」はとても大切な授業です。探究学習白書2020によると、「総合的な探究(学習)の時間の授業時数が多い」と思っている高校教師は44.6%いることがわかりました。
総合的な探究(学習)の時間の授業時数について先生たちはどのように考えているのでしょうか。
「総合的な探究(学習)の時間」の授業時数は多い
下のグラフは、「総合的な探究の時間」、あるいは「総合的な学習の時間」の授業時数について、「多い」「ちょうどよい」「少ない」のどれにあてはまるかについてアンケート調査を行った結果を表しています。最も回答の多かったのが「多い」の44.6%という結果でした。「ちょうどよい」の回答率は42.2%で、「多い」と拮抗しています。一方、「少ない」と回答した人は13.2%でした。
高校の学科別で見ると、「多い」の回答率が一番高かったのは普通科(コース制)高校の46.6%でした。多いと回答した理由は、「他の授業をした方が良い。総合の時間は確かに生徒のためには良い学習だが、やはり受験の方が大事だという意見が強い」といったものや「かけられる労力に比べて得るものは少ない。また他の教科を犠牲にしてまでするほどの意味合いを感じない。やるならもっと時間をかけるべき」といった意見がありました。「時間の無駄。教科指導にもっと時間を費やすべき」という厳しい意見もありました。
一方、「少ない」の回答率が一番高かったのは工業高校(18.9%)でした。少ないと回答した理由は、「すこしかじったくらいで終わってしまう」「成果発表まで含めての指導になるため時間が足りない」「ものづくりを主としているが、週2時間では作り終わらない」といった声が寄せられています。
出典:探究学習白書2020
大学進学率別では大きな違いは見られない
下のグラフは、「総合的な探究(学習)の時間」の授業時数について多いかどうか、大学進学率別で表したものです。高校の大学進学状況によって、先生の考えに相違は見られなかった、という結果が出ています。
「多い」と感じている意見を挙げると、「進学校なので授業進度の確保で精一杯」、「毎回、準備が大変。通常の教科の授業準備とは負担が大きく違う」といったように、教師にかかる負担の大きさも「多い」と感じる要因になっているようです。
「時間設定するものではなく、本来自分で時間を見つけ行うべきものだと思う」というような意見もありました。
出典:探究学習白書2020
中学校でも授業時数が多いと感じている教師が多い
下のグラフは、中学校の探究学習科目「総合的な学習の時間」の授業時数について、「多い」「ちょうどよい」「少ない」のどれにあてはまるかについてアンケート調査を行った結果です。高校の結果とほとんど同じであることがわかります。
「多い」と回答した理由には、「他の授業に充てるべき。基礎基本ができていないと効果が無い。これらの内容は学校でやるべきことなのか疑問が残る」、「成績に関係ないので、生徒が興味を示さない」、「各教科で十分に教育目標を達成しており、そもそも不要だと思う」などがありました。
「少ない」と回答した理由には、「生徒自身が課題に対して調べて、まとめるためには時間がかかるから」といったものや、「もう少し時間があれば、もっとわかりやすい授業ができると思う」、「教科横断的な学習は大切だから」といった回答がありました。
出典:探究学習白書2020