高校新学習指導要領における「世界史探究」「日本史探究」とはどのような科目か

2018年に高校の学習指導要領が改訂され、新しい教科の設置や科目の統廃合などが行われました。歴史の教科については、世界史A、世界史B、日本史A、日本史Bの4科目だったのが、歴史総合、世界史探究、日本史探究の3科目に変わりました。歴史総合は世界史Aと日本史Aを統合した科目で、世界史探究は世界史Bをベースとし、日本史探究は日本史Bをベースとした科目です。歴史総合は必修科目で、世界史探究と日本史探究は選択科目です。

高校生は、1年次、あるいは2年次で歴史総合を学び、2年次か3年次で世界史探究、あるいは日本史探究を学ぶことが考えられます。「探究」の名の付いた、世界史探究と日本史探究はどのような科目なのでしょうか、そしてどのようなことを学ぶのでしょうか。

世界史探究

世界史探究の科目では、「社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を育成する」ことを目指しています。

世界史Bと世界史探究の教育課程を比較すると、「諸地域の歴史的特質への問い」「諸地域の交流・再編への問い」「諸地域の結合・変容への問い」といった項目が追加されています。ここでの「問い」とは、諸地域の歴史的特質を読み解く観点に関する資料を活用して、情報を読み取ったり、まとめたりして複数の資料を比較したり、関連付けたりすることによって諸地域の歴史的特質に関わって抱いた興味や関心、疑問、追究してみたいことなどを見出す学習活動を指します。

世界史B 世界史探究
(1)世界史への扉
ア 自然環境と人類のかかわり
イ 日本の歴史と世界の歴史のつながり
ウ 日常生活にみる世界の歴史
(2)諸地域世界の形成
ア 西アジア世界・地中海世界
イ 南アジア世界・東南アジア世界
ウ 東アジア世界・内陸アジア世界
エ 時間軸からみる諸地域世界
(3)諸地域世界の交流と再編
ア イスラーム世界の形成と拡大
イ ヨーロッパ世界の形成と展開
ウ 内陸アジアの動向と諸地域世界
エ 空間軸からみる諸地域世界
(4)諸地域世界の結合と変容
ア アジア諸地域の繁栄と日本
イ ヨーロッパの拡大と大西洋世界
ウ 産業社会と国民国家の形成
エ 世界市場の形成と日本
オ 資料からよみとく歴史の世界
(5)地球世界の到来
ア 帝国主義と社会の変容
イ 二つの世界大戦と大衆社会の出現
ウ 米ソ冷戦と第三世界
エ グローバル化した世界と日本
オ 資料を活用して探究する地球世界の課題
A 世界史へのまなざし
(1)地球環境から見る人類の歴史
(2)日常生活から見る世界の歴史
B 諸地域の歴史的特質の形成
(1)諸地域の歴史的特質への問い
(2)古代文明の歴史的特質
(3)諸地域の歴史的特質
C 諸地域の交流・再編
(1)諸地域の交流・再編への問い
(2)結び付くユーラシアと諸地域
(3)アジア諸地域とヨーロッパの再編
D 諸地域の結合・変容
(1)諸地域の結合・変容への問い
(2)世界市場の形成と諸地域の結合
(3)帝国主義とナショナリズムの高揚
(4)第二次世界大戦と諸地域の変容
E 地球世界の課題
(1)国際機構の形成と平和への模索
(2)経済のグローバル化と格差の是正
(3)科学技術の高度化と知識基盤社会
(4)地球世界の課題の探究

世界史探究の教育課程は、世界史Bの教育課程をベースに構成されていますが、下記のような改善が図られています。

  • 「社会的事象の歴史的な見方・考え方」に基づく学習活動の充実
  • 「主題」や「問い」を中心に構成する学習の展開
  • 単元や内容のまとまりを重視した学習の展開
  • 世界の歴史の大きな枠組みと展開を捉える内容の構成
  • 資料を活用し、歴史の学び方を習得する学習
  • 歴史的経緯を踏まえた地球世界の課題の探究

日本史探究

日本史探究の科目では、「社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を育成する」ことを目指しています。世界史探究の目標と同じです。

日本史Bでは、教育課程が6つの項目に分かれていましたが、日本史探究では「(4)近代日本の形成と世界」「(5)両世界大戦期の日本と世界」「(6)現代の日本と世界」の3項目を「D 近現代の地域・日本と世界」の項目にまとめています。近現代に関する項目数は、日本史Bでは全項目の半分を占めていたのに対し、日本史探究では他の時代と同等の配分になりました。

日本史B 日本史探究
(1)原始・古代の日本と東アジア
ア 歴史と資料
イ 日本文化の黎明と古代国家の形成
ウ 古代国家の推移と社会の変化
(2)中世の日本と東アジア
ア 歴史の解釈
イ 中世国家の形成
ウ 中世社会の展開
(3)近世の日本と世界
ア 歴史の説明
イ 近世国家の形成
ウ 産業経済の発展と幕藩体制の変容
(4)近代日本の形成と世界
ア 明治維新と立憲体制の成立
イ 国際関係の推移と立憲国家の展開
ウ 近代産業の発展と近代文化
(5)両世界大戦期の日本と世界
ア 政党政治の発展と大衆社会の形成
イ 第一次世界大戦と日本の経済・社会
ウ 第二次世界大戦と日本
(6)現代の日本と世界
ア 現代日本の政治と国際社会
イ 経済の発展と国民生活の変化
ウ 歴史の論述
A 原始・古代の日本と東アジア
(1)黎明期の日本列島と歴史的環境
(2)歴史資料と原始・古代の展望
(3)古代の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈,説明,論述)
B 中世の日本と世界
(1)中世への転換と歴史的環境
(2)歴史資料と中世の展望
(3)中世の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈,説明,論述)
C 近世の日本と世界
(1)近世への転換と歴史的環境
(2)歴史資料と近世の展望
(3)近世の国家・社会の展開と画期(歴史の解釈,説明,論述)
D 近現代の地域・日本と世界
(1)近代への転換と歴史的環境
(2)歴史資料と近代の展望
(3)近現代の地域・日本と世界の画期と構造
(4)現代の日本の課題の探究

日本史探究の学習指導要領には、「時代を通観する問いを表現する」「時代を通観する問いを踏まえ~」といった文言が散見されます。時代を通観する問いとは、前の時代からの変化と新たな時代に成立した社会との関係や、その変化が時代を通じて定着していく理由や条件などを考察するために、生徒自身が設定する「問い」を指しています。

日本史探究の教育課程では、日本史Bの教育課程をベースにして下記のような改善を図っています。

  • 「社会的事象の歴史的な見方・考え方」に基づく学習活動の充実
  • 「主題」や「問い」を中心に構成する学習の展開
  • 単元や内容のまとまりを重視した学習の展開
  • 「歴史の解釈、説明、論述」を通じた知識、概念の深い理解と思考力、判断力、表現力等の育成の一層の重視
  • 資料を活用し、歴史の学び方を習得する学習
  • 歴史的経緯を踏まえた現代の日本の課題の探究

関連サイト

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