2018年に高等学校学習指導要領が改訂され、新たに「理数探究基礎」と「理数探究」の2科目が新設されました。理数探究基礎と理数探究では、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして、課題を解決するために必要な資質・能力を育成することを目標に掲げています。
理数探究基礎と理数探究の2科目は、学習指導要領ではどのように規定しているのでしょうか。2つの科目の違いについて見ていきましょう。
理数探究基礎と理数探究の単位数と履修方法
理数探究基礎と理数探究は理数科という教科に分類され、2科目とも選択科目として扱われます。標準単位数は、理数探究基礎が1、理数探究が2~5です。理数探究基礎、または理数探究を履修することで、総合的な探究の時間の履修の一部、または全部に替えることができます。
理数探究基礎と理数探究を履修する場合の順序は決められていませんが、学習指導要領の解説書には、理数探究基礎を履修した上で理数探究を履修することが望ましいと書かれています。総合的な探究の時間において理数探究基礎の知識が養えたと判断した場合は、理数探究基礎を履修せずに理数探究を履修することができます。
なお、理数に関する専門学科においては、「課題研究」の科目を廃止する替わりに理数探究を履修することになります。
学習指導要領における、理数科の共通目標
学習指導要領では理数科の共通目標を次のように規定しています。
様々な事象に関わり、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして働かせ、探究の過程を通して、課題を解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)対象とする事象について探究するために必要な知識及び技能を身に付けるようにする。
(2)多角的、複合的に事象を捉え、数学や理科などに関する課題を設定して探究し、課題を解決する力を養うとともに創造的な力を高める。
(3)様々な事象や課題に向き合い、粘り強く考え行動し、課題の解決や新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦しようとする態度、探究の過程を振り返って評価・改善しようとする態度及び倫理的な態度を養う。
学習指導要領における目標の違い
目標について、理数探究基礎では「課題を解決するために必要な基本的な資質・能力を育成する」であるのに対し、理数探究では「課題を解決するために必要な資質・能力を育成する」と規定しています。理数探究基礎では、理数探究の学習につながる、基本的事項を学ぶことがわかります。
理数探究基礎
様々な事象に関わり、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして働かせ、探究の過程を通して、課題を解決するために必要な基本的な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)探究するために必要な基本的な知識及び技能を身に付けるようにする。
(2)多角的、複合的に事象を捉え、課題を解決するための基本的な力を養う。
(3)様々な事象や課題に知的好奇心をもって向き合い、粘り強く考え行動し、課題の解決に向けて挑戦しようとする態度を養う。
理数探究
様々な事象に関わり、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして働かせ、探究の過程を通して、課題を解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)対象とする事象について探究するために必要な知識及び技能を身に付けるようにする。
(2)多角的、複合的に事象を捉え、数学や理科などに関する課題を設定して探究し、課題を解決する力を養うとともに創造的な力を高める。
(3)様々な事象や課題に主体的に向き合い、粘り強く考え行動し、課題の解決や新たな価値の創造に向けて積極的に挑戦しようとする態度、探究の過程を振り返って評価・改善しようとする態度及び倫理的な態度を養う。
学習内容の違い
学習内容について、理数探究基礎では「基本的な技能」を身に付けることに重点を置いています。一方、理数探究では生徒が課題解決に向けて主体的に行動することを前提にした構成になっています。
理数探究基礎
様々な事象についての探究の過程を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア)探究の意義についての理解
(イ)探究の過程についての理解
(ウ)研究倫理についての理解
(エ)観察、実験、調査等についての基本的な技能
(オ)事象を分析するための基本的な技能
(カ)探究した結果をまとめ、発表するための基本的な技能
イ 次のような思考力、判断力、表現力等を身に付けること。
(ア)課題を設定するための基礎的な力
(イ)数学的な手法や科学的な手法などを用いて、探究の過程を遂行する力
(ウ)探究した結果をまとめ、適切に表現する力
理数探究
様々な事象について、主体的に課題を設定し探究の過程を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア)探究の意義についての理解
(イ)探究の過程についての理解
(ウ)研究倫理についての理解
(エ)観察、実験、調査等についての技能
(オ)事象を分析するための技能
(カ)探究の成果などをまとめ、発表するための技能
イ 次のような思考力、判断力、表現力等を身に付けること。
(ア)多角的、複合的に事象を捉え、課題を設定する力
(イ)数学的な手法や科学的な手法などを用いて、探究の過程を遂行する力
(ウ)探究の過程を整理し、成果などを適切に表現する力
理数探究基礎と理数探究における内容の取扱い
理数探究では、数学的な手法や科学的な手法などを用いることや、探究の過程を振り返って、探究の質の向上を図るといった内容が追加されています。
理数探究基礎
(1)実施に当たっては、次のような事象等の探究の過程を通して、内容に示す基本的な知識及び技能や思考力、判断力、表現力等を身に付けるようにするものとする。
ア 自然事象や社会事象に関すること
イ 先端科学や学際的領域に関すること
ウ 自然環境に関すること
エ 科学技術に関すること
オ 数学的事象に関すること
(2)実施に当たっては、探究した結果について、報告書などを作成させるものとする。
理数探究
(1)実施に当たっては、次のような事象等の探究の過程を通して、内容に示す知識及び技能や思考力、判断力、表現力等を身に付けるようにするものとする。
ア 自然事象や社会的事象に関すること
イ 先端科学や学際的領域に関すること
ウ 自然環境に関すること
エ 科学技術に関すること
オ 数学的事象に関すること
(2)実施に当たっては、生徒の興味・関心、進路希望等に応じて、(1)のアからオまでの中から、個人又はグループで適切な課題を設定させるものとする。
(3)実施に当たっては、数学的な手法や科学的な手法などを用いるものとする。
(4)実施に当たっては、探究の過程を振り返る機会を設け、意見交換や議論を通して、探究の質の向上を図るものとする。
(5)実施に当たっては、探究の成果などについて、報告書を作成させるものとする。