高校の新学習指導要領における「古典探究」とはどのような科目なのか

2018年に改訂された高校の新学習指導要領では、「探究」の名前の付く科目がいくつか誕生しました。その1つに「古典探究」があります。「古典探究」は「古典B」をベースとした科目で、古文や漢文を主体的に読み深めることを通して、日本の伝統的な言語文化への理解や関心を深めることを目的とした科目です。

「古典探究」とはどのような科目なのでしょうか。「古典B」と比較しながら見ていきましょう。

古典探究の目標

古典探究の科目における目標について、新学習指導要領では次のように規定しています。

言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で的確に理解し効果的に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)生涯にわたる社会生活に必要な国語の知識や技能を身に付けるとともに、我が国の伝統的な言語文化に対する理解を深めることができるようにする。

(2)論理的に考える力や深く共感したり豊かに想像したりする力を伸ばし、古典などを通した先人のものの見方、感じ方、考え方との関わりの中で伝え合う力を高め、自分の思いや考えを広げたり深めたりすることができるようにする。

(3)言葉がもつ価値への認識を深めるとともに、生涯にわたって古典に親しみ自己を向上させ、我が国の言語文化の担い手としての自覚を深め、言葉を通して他者や社会に関わろうとする態度を養う。

 

国語科では、育成を目指す資質や能力を、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3つに分けています。

古典探究の科目では、(1)で「知識及び技能」に関する目標を示しています。また、(2)で「思考力、判断力、表現力等」、(3)で「学びに向かう力、人間性等」に関する目標を示しています。

一方、古典Bの目標は次の通りです。

古典としての古文と漢文を読む能力を養うとともに、ものの見方、感じ方、考え方を広くし、古典についての理解や関心を深めることによって人生を豊かにする態度を育てる。

古典探究の学習内容

古典探究における学習内容について、新学習指導要領では「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」に分けて規定しています。古典Bの内容を踏襲している項目は僅かで、多くの項目は新たに設けられたものになっています。

古典探究における学習内容の概要は次の通りです。

知識及び技能

(1)言葉の特徴や使い方

ア 語句の意味や用法
イ 作品や文章の種類、特徴
ウ 文章の構成や展開の仕方
エ 表現の特色

(2)言語文化

ア 日本の文化の特質や外国の文化との関係
イ 文語のきまりや訓読のきまり
ウ 言葉の変化
エ 読書の意義と効用

思考力、判断力、表現力等

(1)読むことの指導

ア 文章の構成や展開
イ 古典特有の表現
ウ 書き手の考えや目的、意図を捉える
エ 古典作品の価値を考察する
オ 古典作品の内容や解釈を知見と結び付ける
カ 古典作品を踏まえて人間や社会、自然に対する考えを広げる
キ 古典作品を通じてものの見方や感じ方、考え方を深める
ク 古典作品を通じて日本の言語文化について考えを広げたり深めたりする

(2)言語活動を通した指導

ア 古典作品を読んで発表したり議論したりする
イ 古典作品を読み比べて、共通点や相違点を論述したり発表したりする
ウ 和歌や俳諧、漢詩などの創作
エ 古典作品の朗読
オ 古典作品について調べ、発表したり報告書にまとめたりする
カ 古典の言葉と現代の言葉を比較し、分かったことなどを論文にまとめる
キ 名句や名言を読んで意義や価値などについてまとめる

古典探究の内容の取扱い

古典探究の内容の取扱いは、古典Bと国語総合をベースにして構成されています。

古典探究の内容の取扱いに関する学習指導要領比較対象表

古典探究 古典B/国語総合
(1) 内容の〔知識及び技能〕に関する指導については、次の事項に配慮するものとする。
ア (2)のイの指導については、〔思考力、判断力、表現力等〕の「A読むこと」の指導に即して行い、必要に応じてある程度まとまった学習もできるようにすること。 【古典B】
(3) 文語文法の指導は読むことの学習に即して行い、必要に応じてある程度まとまった学習もできるようにする。
(2) 内容の〔思考力、判断力、表現力等〕の「A読むこと」に関する指導については、次の事項に配慮するものとする。
ア 古文及び漢文の両方を取り上げるものとし、一方に偏らないようにすること。 (1) 古文及び漢文の両方を取り上げるものとし、一方に偏らないようにする。
イ 古典を読み深めるため、音読、朗読、暗唱などを取り入れること。 (2) 古典を読み深めるため、音読、朗読、暗唱などを取り入れるようにする。
ウ 必要に応じて、古典の変遷を扱うこと。 (新設)
(3) 教材については、次の事項に留意するものとする。 (4) 教材については、次の事項に留意するものとする。
ア 内容の〔思考力、判断力、表現力等〕の「A読むこと」の教材は、古典としての古文及び漢文とし、日本漢文を含めるとともに、論理的に考える力を伸ばすよう、古典における論理的な文章を取り上げること。また、必要に応じて、近代以降の文語文や漢詩文、古典についての評論文などを用いることができること。 イ 教材には、日本漢文を含めること。また、必要に応じて近代以降の文語文や漢詩文、古典についての評論文などを用いることができること。
【国語総合】
(6) 教材については、次の事項に留意するものとする。
イ 内容の〔思考力、判断力、表現力等〕の「A読むこと」の(2)に掲げる言語活動が十分行われるよう教材を選定すること。 ア 教材は、話すこと・聞くことの能力、書くことの能力、読むことの能力などを偏りなく養うことや読書に親しむ態度の育成をねらいとし、生徒の発達の段階に即して適切な話題や題材を精選して調和的に取り上げること。また、内容のA、B及びCのそれぞれの(2)に掲げる言語活動が十分行われるよう教材を選定すること。
【古典B】
(4) 教材については、次の事項に留意するものとする。
ウ 教材は、言語文化の変遷について理解を深める学習に資するよう、文章の種類、長短や難易などに配慮して適当な部分を取り上げること。 ア 教材は、言語文化の変遷について理解を深める学習に資するよう、文種や形態、長短や難易などに配慮して適当な部分を取り上げること。

 

(2)のウ 必要に応じて、古典の変遷を扱うこと」は、新たに追加された項目です。

「古典探究」の授業では、作品を読んでその内容や表現の特色を掴み、考えを深めたり発展させたりすることに主眼を置いています。古典作品や文章の変遷については必要に応じて扱うことになります。

新学習指導要領の解説では、古典の変遷について次のように説明しています。

古典の変遷とは、近世以前の文章史や文学史のことである。上代から近世に至る時代の推移と、文章や文学の変遷とは密接な関連がある。読んだ作品や文章の書き手がどのような考えをもち、その時代の他の書き手はどのような考えをもっているのかを知ることや、散文や韻文といった文章の種類が、書かれた時代によってどのように変遷しているのかなどについて理解を深めることが、主体的で多面的・多角的な視点からの読書にも結び付いていく。このことを踏まえ、生徒の発達の段階や科目の趣旨などを考慮して、作品や文章の内容や特質を理解するために、必要に応じて取り扱うということである。

 

参照:高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 国語編(文部科学省)