「探究の質を高める」が改訂の核心。中教審の論点整理をもとに、学校現場が知っておくべき変化のポイントを整理しました。
① なぜ今、探究学習が見直されるのか
AIの急速な発展やグローバル化の進展により、「正解をすばやく出す力」よりも「自分で問いを立て、考え抜く力」が求められる時代が到来しています。こうした社会変化を背景に、文部科学省は次期学習指導要領の改訂に向けた議論を2024年末から本格的にスタートさせました。
現行の学習指導要領(小・中学校:2017年告示、高校:2018年告示)でも「主体的・対話的で深い学び」や「総合的な探究の時間」が導入されましたが、現場では「ネットで調べてまとめるだけで終わっている」「表面的な活動に留まっている」という声も聞かれます。次期改訂では、この「探究の質」を高めることが重点課題のひとつとして明確に掲げられています。
💡 ポイント:次期学習指導要領の改訂方針は2025年9月に「論点整理(素案)」として公表され、「主体的・対話的で深い学びの実装」が第一の方向性として位置づけられています。
② 次期学習指導要領での探究の位置付け
2025年9月に文部科学省が公表した「論点整理(素案)」では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の実装」が次期学習指導要領に向けた第一の方向性とされています。探究学習はその中心に据えられており、単なる「オプション授業」ではなく、すべての教科・活動を貫く学びのスタイルとして位置づけられることが明確になっています。
特に重要なのは、探究学習が「総合的な学習・探究の時間」だけに限定されるものではなく、各教科の日常的な授業においても探究的なプロセスを組み込んでいくという方向性です。「活用から習得へ」という流れ、つまり探究課題に取り組む中で自然と知識・技能を習得していく学びのプロセスが目指されています。
第一の方向性
「主体的・対話的で深い学び」の実装が次期改訂の最重要テーマ全教科横断
「総合的な探究の時間」だけでなく各教科でも探究的な学びを実装活用→習得
探究課題を通して知識を習得する「活用から習得へ」のプロセスを重視社会とつながる
地域・社会と接点を持つリアルな文脈での学びを推進
③ 現行との主な変更点・強化ポイント
現行の学習指導要領でも探究学習は重要視されてきましたが、現場での浸透には学校間の格差があることが課題として挙げられています。次期改訂では、この格差を縮めるために「誰でも分かりやすく、具体的な行動に移しやすい」学習指導要領を目指す方針が示されています。
探究の「質」の向上
次期指導要領では、探究学習の内容が以下の観点から見直されます。単に情報を収集してまとめるのではなく、「その情報から何がわかるか」「どう考えるか」まで深める思考のプロセスが重視されます。子ども自身が「なぜ?」「どうして?」という問いから学びをスタートできるよう、教師の役割もテーマを与える側からサポートする側へとシフトします。
「学校を開く」地域連携の推進
探究活動が活発な学校の共通点として「地域に学校を開き、生徒が地域の大人と関わりを持てるように支援している」点が挙げられています。次期改訂でも地域・社会との連携を通じた探究活動の深化が推進される方向です。フィールドワークや地域課題への取り組みが、より体系的に位置づけられることが期待されます。
学習評価の見直し
「主体性」の評価が曖昧で混乱を招いているという現場の声を受け、「学びに向かう力・人間性等」の評価については、教育課程全体を通じた個人内評価として行う方向性が検討されています。毎時間の観点別評価の負担を軽減しつつ、子どもの成長をより的確に捉える仕組みが模索されています。
④ 情報活用能力との連携強化
次期改訂の大きな特徴のひとつが、探究学習と情報活用能力の緊密な連携です。文部科学省の論点整理では、情報活用能力を「各教科等における探究的な学びを支える基盤」と位置づけ、抜本的な向上を図る方針が示されています。
具体的には、小学校の「総合的な学習の時間」に「情報の領域(仮称)」を付加し、中学校では「技術・家庭科」を「家庭科」と「情報・技術科(仮称)」に分離する案が検討されています。これにより、探究学習やプロジェクト型学習においても「情報の読み解き・活用」が当然の基盤として組み込まれるようになります。
🔑 キーワード:情報活用能力は「読み・書き・計算」に続く新しい基礎力。探究学習と情報教育を一体的に強化することで、AIが普及する社会を生き抜く力を育てます。
⑤ 改訂スケジュールと全面実施の時期
次期学習指導要領の改訂スケジュールは以下のとおりです。現在は各教科のワーキンググループで具体的な内容が検討されている段階です。
2025年9月〜 各教科ワーキンググループが始動、具体的な内容を検討
2026年夏ごろ 各WGが取りまとめ、教育課程部会で「審議まとめ」
2026年度内 中央教育審議会が答申
2027年度中 新学習指導要領の告示(発行)
2030年度〜 小学校で全面実施
2031年度〜 中学校で全面実施
2032年度〜 高等学校で年次進行により実施
告示から全面実施まで約3年の移行期間が設けられる見込みで、この間に教科書の改訂・検定・採択が行われます。学校現場は今から準備を進めることが重要です。
⑥ 学校・保護者が今すべき準備
学校・教員向け
現在、探究活動が活発に行われている学校と、なかなか進まない学校の間には大きな差があります。次期改訂ではこの格差を縮めるための取り組みが強化される方向ですが、学校側も主体的な準備が求められます。探究活動の質を高めるためのコーディネーター人材の育成や、地域・企業との連携体制の構築を今から進めておくことが有効です。また、ICTツールの効果的な活用方法を研修しておくことも重要です。
保護者・家庭向け
次期学習指導要領が目指す探究的な学びを家庭でもサポートするためには、日常の会話の中で「なぜそう思うの?」「どうやって調べた?」などと問いかける習慣が大切です。答えをすぐに教えるのではなく、子ども自身が考えるプロセスを一緒に楽しむ姿勢が、学校での探究学習の質を高める土台になります。
📝 まとめ
次期学習指導要領(2027年度告示予定)では「主体的・対話的で深い学びの実装」が第一の方向性であり、探究学習はその中核を担う。
探究学習は「総合的な探究の時間」だけでなく、すべての教科を横断して深化される方針。
「情報活用能力」を探究的な学びの基盤と位置づけ、小学校・中学校での情報教育が大幅に強化される。
探究の「質」向上のため、子ども自身の問い立て・思考プロセス・地域連携が重視される。
全面実施は小学校が2030年度、中学校が2031年度、高校が2032年度から。
学校・家庭ともに、探究を支える環境づくりを今から意識的に進めることが重要。


