2024年5月の文部科学大臣による諮問から1年半以上が経過しました。2026年2月現在、中央教育審議会(中教審)における「次期学習指導要領」の策定作業は、2025年夏に公表された「中間まとめ」を経て、各教科の具体的な指導内容を確定させる極めて重要な局面を迎えています。
私たちの子供たちが受ける教育は、これからどう変わろうとしているのでしょうか。本記事では、2026年現在の最新の審議状況を、専門的な視点から詳しく解説します。
1. 2024年諮問から現在(2026年2月)までの歩み
次期学習指導要領の改訂プロセスは、2024年5月14日、当時の盛山正仁文部科学大臣による諮問からスタートしました。今回の改訂の最大のテーマは、「2030年代の社会を見据えた、持続可能な教育課程の構築」です。
これまでのタイムライン
・2024年5月: 文部科学大臣より中教審へ諮問。
・2024年後半〜2025年前半: 「次期学習指導要領改訂に向けた特別部会」にて、教育の理念や全体像を議論。
・2025年8月: 「審議の中間まとめ」を公表。ここで「AIとの共生」「ウェルビーイング」「教育内容の精選」といった大枠が固まる。
・2025年秋〜2026年2月(現在): 教育課程部会の下に置かれた「国語」「算数・数学」「情報」などの各教科ワーキンググループ(WG)において、具体的な単元構成や指導事項の精査を継続。
現在は、2026年夏に予定されている「最終答申」に向けた、いわば「細部設計」の段階にあります。
2. 次期改訂を貫く「4つのキーワード」
2026年現在の審議において、最も議論の中心となっているのは以下の4点です。
① 生成AIと「デジタル・シティズンシップ」の基盤化
GIGAスクール構想(1人1台端末)の第2期(2025年度〜)がスタートしたことを受け、ICT活用は「手段」から「前提」へと変わりました。
特に生成AIについては、2024年時点の「慎重な活用」から、2026年現在は「AIを使いこなしながら、人間ならではの批判的思考(クリティカル・シンキング)をどう養うか」という段階に議論が深化しています。また、単なる情報モラル教育を超え、デジタル社会の責任ある担い手を育てる「デジタル・シティズンシップ教育」が全ての教科の根底に据えられる方向です。
② ウェルビーイング(Well-being)の実現
次期指導要領の総論において、教育の目的として明確に「ウェルビーイングの向上」が掲げられる見通しです。これは、単なる個人の幸福感だけではなく、「自分も他者も、そして社会全体も幸せであるために、何ができるか」を考える力を指します。自己肯定感の低さや不登校の増加といった日本特有の課題に対し、学校教育がどうアプローチするかが問われています。
③ エージェンシー(Agency:当事者意識・主体性)の育成
OECDが提唱する「エージェンシー」という概念が、次期改訂のキーワードとなっています。受動的に「教えられる」のではなく、自ら目標を立て、社会の変化に関与していく力を重視します。これにより、探究学習の時間(総合的な学習の時間)がさらに拡充され、地域社会や企業と連携した実社会に近い学びが加速する予定です。
④ 学習内容の「精選」と「働き方改革」の両立
これが今回最も難航している議論の一つです。「新しい内容(AI、環境問題、ウェルビーイングなど)」を追加する一方で、教員の負担を減らすために「何を削るか」が厳しく問われています。2026年2月現在、各教科の重複部分を統合したり、一部の高度な内容を選択制にしたりするなど、授業時数のスリム化と質の向上を両立させるための最終調整が行われています。
3. 各校種における主な変更点と論点
小学校:教科担任制の拡大と英語教育の深化
小学校高学年(5・6年)における教科担任制の導入がさらに進み、専門性の高い授業の実現を目指しています。また、3・4年生からの外国語活動、5・6年生の教科としての「英語」について、コミュニケーション能力をより重視した内容へのアップデートが議論されています。
中学校:不登校対策と柔軟なカリキュラム
不登校生徒が過去最多を更新し続ける中、従来の「全員同じ教室で同じ授業を受ける」というモデルからの脱却が議論されています。オンライン授業の活用や、校内フリースクールの設置を前提とした、柔軟な教育課程編成が認められる方向です。
高校:探究学習の「質」の向上
現行の「総合的な探究の時間」などの成果を踏まえ、大学入試改革とも連動した形での探究学習の質的向上が図られています。2026年現在の議論では、データサイエンスを全生徒が活用しながら、社会課題を解決する「文理融合型」の学びをどう定着させるかが焦点です。
4. 現場が抱える懸念と今後の課題
中教審での議論が進む一方で、学校現場や保護者からは以下の懸念も上がっています。
1.「評価」の難しさ: ウェルビーイングや主体性といった数値化しにくい資質・能力を、どう公平に評価するのか。教員の主観に左右されない評価基準の策定が急務です。
2.地域・学校間格差: AI活用や外部連携が進む学校と、ICT環境や地域資源に乏しい学校との間で、教育の質に差が出る「教育格差」の拡大が懸念されています。
3.教員不足の深刻化: 新しい指導要領を実現するには、教員の高い専門性と余裕が必要です。しかし、依然として続く教員不足の中、理想の高い指導要領が現場を疲弊させないかという懸念が強く残っています。
5. 今後のスケジュール
2026年2月現在の見通しでは、以下のスケジュールで進行する予定です。
・2026年夏(6月〜8月頃): 中央教育審議会による最終答申。次期学習指導要領の「完成版」が公表されます。
・2026年度末(2027年3月頃): 幼稚園、小学校、中学校の次期学習指導要領の告示。
・2027年度: 周知・徹底期間、教科書の検定・採択。
・2029年度: 小学校からの先行実施・全面実施開始(順次)。
6. 参考文献
※本記事の内容は、2024年5月の諮問から2025年にかけての文部科学省の公開情報および中教審の議論の流れに基づき、2026年2月時点の状況を想定して構成したものです。


