高校の「総合的な探究の時間」の授業では、生徒が日常生活や社会に目を向けて、自ら課題を設定することから始まります。そして、情報の収集や情報の整理・分析を行い、研究結果をまとめて発表するところまでが1つの学習サイクルになります。1つの学習サイクルが終わった時には生徒自身の考え方がアップデートされ、1つ上のステージに立って再び探究学習が繰り返されます。
探究学習で大切なのは探究のプロセスです。探究のプロセスとは、(1)課題の設定、(2)情報の収集、(3)整理・分析、(4)まとめ・表現の4つを指します。
(1)課題の設定
課題の設定では、生徒自身と日常生活・社会との関わりから課題を発見することが求められます。また、発見する過程を重視することが大切です。
課題設定時においては、課題を与えることはもとより、ヒントになるような(誘導するような)アドバイスは好ましくありません。例えば、「プラスチックごみの問題について考えてみよう」「男女平等についてどう思うか」といったアドバイスではなく、「家庭で話題になっていることは何か」、「気になっているニュースは何か」といったように自主的に課題を発見させることが大切です。
常日頃から自分事として課題意識を持たせるようにすれば課題設定はスムーズに進むでしょう。
『探究学習白書2022』によると、課題の設定について、教員の48.0%が多くの生徒にサポートしたと回答しています。この結果から、生徒は課題の設定をあまり得意としていないことがわかります。
参照:『探究学習白書2022』
(2)情報の収集
情報の収集では、書籍や新聞、雑誌、インターネットなどを使って、課題解決に向けた各情報を幅広く収集することを目的としています。また、専門家の講演を聞いたり、博物館や資料館へ赴いたりすることも情報収集活動の1つです。
今では、インターネットを使った情報収集は欠かせないといっても過言ではありません。ブラウザを使ってのさまざまな検索手法は、早期に会得したいスキルといえるでしょう。
『探究学習白書2022』によると、情報の収集について、教員の45.3%が多くの生徒にサポートしたと回答しています。一昨年の同調査では52.1%だったので、7ポイント近く改善されています。
参照:『探究学習白書2022』
(3)整理・分析
2016年12月の中央教育審議会答申において「総合的な学習の時間」の改訂の具体的な方向性が示されました。その中で、小学校、中学校においては「整理・分析」と「まとめ・表現」への取り組みが充分でないことが指摘されています。高等学校については知識・理解を偏重した指導になっていることが指摘されています。
小学校、中学校共に、「観察・実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・考察し、説明すること」などの資質・能力に課題が見られることが明らかになっているほか、高等学校については、観察・実験や探究的な活動が十分に取り入れられておらず、知識・理解を偏重した指導となっているなどの指摘がある。 |
参照:幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(文部科学省)
整理・分析では、インターネットから入手したデータをExcelなどのスプレッドシートで整理・分類したり、数値データをグラフで表したりする能力が求められます。
また、情報発信元である一次情報サイト、ニュースを発信している二次情報サイト、個人ブログなどの三次情報サイトについての情報の正確性、信ぴょう性、即時性を理解させる必要があります。
『探究学習白書2022』では、整理・分析について、教員の44.1%が多くの生徒にサポートしたと回答しています。
参照:『探究学習白書2022』
(4)まとめ・表現
まとめ・表現では、これまでの探究によって気付いたことや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し発表します。まとめ・表現をうまくこなしていくことで、論理的な表現が上達していきます。
課題の設定や情報の整理がうまく進んでも、発表でつまずいてしまうと自信を失くしてしまうこともあります。次のまとめ・表現のポイントを押さえてアドバイスするとよいでしょう。
まとめ・表現のポイント
・相手意識や目的意識を明確にしてまとめたり表現したりすること
・まとめたり表現したりすることが情報を再構成し、自分自身の考えや新たな課題を自覚することにつながるということ
・伝えるための具体的な手順や作法を適切に身に付けること
・目的に応じて選択して使えるようにすること