2019年度、高校における探究学習科目の実施状況

高等学校の学習指導要領が改訂され、2022年度から年次進行で実施されます。2019年度から2021年度までの間は移行期間に定められていて、新旧2つの学習指導要領のもとで指導が行われます。

新学習指導要領では、古典探究をはじめ地理探究、日本史探究、世界史探究、理数探究基礎、理数探究といった探究学習の科目が新設されました。これらの科目については、実施する高校もあれば、実施しない高校もあります。

探究学習白書」の調査によると、2019年度の探究学習科目の実施率は、およそ8%~14%であることがわかりました。また、約30%の高校が数年以内に探究学習科目を実施すると回答しています。

各科目の実施状況や今後の実施予定などについて見ていきましょう。

実施率の高かった科目は理数探究

下のグラフは、2019年度(移行期間の初年度)の探究学習科目の実施状況を示したものです。実施率の高かった科目は理数探究の13.5%という結果でした。一方、実施率の低かった科目は古典探究の8.1%でした。

理数探究の実施率が高かった理由としては、理数探究が大学入学共通テストに採用される予定であることが挙げられます。高大接続システム改革会議「最終報告」によると、2024年度からの大学入学共通テストでは、新学習指導要領の趣旨を十分に踏まえ、特に思考力・判断力・表現力を構成する諸能力をより適切に評価できるものとして、理数探究に対応する科目を出題するとしています。

理数探究を「数年以内(移行期間中)に実施する予定」と回答した高校も17.3%あり、注目度の高いことがわかります。

もう1つの理由として、理数探究、または理数探究基礎を履修すれば、総合的な探究の時間の履修の一部、または全部に替えられる点が挙げられます。

理数探究を導入することで大学受験対策ができ、しかも総合的な探究の時間を導入しなくて済むことになります。

高等学校学習指導要領より

理数の「理数探究基礎」又は「理数探究」の履修により,総合的な探究の時間の履修と同様の成果が期待できる場合においては,「理数探究基礎」又は「理数探究」の履修をもって総合的な探究の時間の履修の一部又は全部に替えることができる。

 

ちなみに理数探究は、理数探究基礎を履修した後に受けなければならない、ということはありません。

 

2019年度 探究学習科目の実施状況

出典:探究学習白書(一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会)

※本データは、2019年7月に全国の高等学校教員370人に対して行ったアンケート調査をまとめたものです。すべての高等学校について調査しまとめたデータではありません。

地理歴史科

地理歴史科には、地理探究、日本史探究、世界史探究の3つの探究学習科目があります。3科目の中で、実施率の最も高かった科目は日本史探究(11.6%)でした。世界史探究は11.1%、地理探究は9.2%という結果でした。

地理歴史科の探究学習科目を「数年以内に実施する予定」と回答した高校は18%~19%あり、他の教科よりも高いことがわかります。

地理探究の実施率が低い理由は、長期にわたって地理の科目が必修科目でなかったことが考えられます。地理の科目(地理総合)は2018年の学習指導要領改訂で60年ぶりに必修科目に設定されたものの、現状では歴史の科目(日本史探究や世界史探究)が優先されているようです。

関連サイト

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