2018年に改訂された高等学校学習指導要領では、探究学習科目の「総合的な学習の時間」に替わって「総合的な探究の時間」の科目が設けられました。
新学習指導要領では、「総合的な探究の時間」の授業への取り組み方として、「学校図書館の活用、他の学校との連携、公民館、図書館、博物館等の社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携、地域の教材や学習環境の積極的な活用などの工夫を行うこと」と規定しています。これを受けて、経済産業省や厚生労働省などの省庁では、出張授業や教材の提供などの探究学習の支援を行っています。どのような授業を行っているのか見ていきましょう。
経済産業省の「標準化」授業
経済産業省と一般財団法人日本規格協会(JSA)では、「身の回りにある標準化」や「社会に役立つ標準」などをテーマに、「標準」の役割や重要性などを理解してもらうための出前授業を行っています。
例えば、乾電池の大きさが世界で標準化されていることで、どの国へ行っても同じ大きさの乾電池を買うことができるというように、標準化の重要性について理解して、興味を持ってもらうことを目的としています。
標準化教室の出前授業は、小学校4年生以上の児童、および中学校、高校生の生徒が対象です。出前授業を受けるには、一般財団法人日本規格協会のWebサイトから応募できます。
ちなみに、探究学習の支援を受けるにあたり、講師の派遣にかかる交通費や教材費などの費用はかかりません。
参照:標準化教室出前授業(一般財団法人日本規格協会)
法務省法務局の「法教育」
法務局では、児童生徒のために身の回りにある法律的な問題をテーマに取り上げて、法律の知識が学べる授業を提供しています。
例えば、学校や町内会など身近な事例を設定して、そこで生じる問題点を解決するためのルール作りを通じて、ルールや憲法についての理解を深めてもらうことを目的とした授業を行います。
また、学校の先生が法教育の授業を円滑に実践できるように、学校の先生向けの研修も実施します。
法教育の授業を受けるには、近くの法務局へ相談してください。授業料などは無料です。なお、刑事司法(捜査や公判、矯正、更生保護など)に関する授業は、検察庁が提供しています。また、少年犯罪に関する授業は、少年鑑別所、あるいは保護観察所で扱っています。
参照:法教育Q&A(法務省)
厚生労働省の「健康被害」「薬害」授業
厚生労働省では、C型肝炎やMMRワクチンなどの薬害を学ぶための教材「薬害を学ぼう」を作成しています。この教材では、「薬害」と呼ばれる医薬品等による「健康被害」について学び、知ることができます。また、健康被害が発生する過程や社会的な動きを学び、今後、同じような被害が起こらない社会の仕組みの在り方を考えることを目的としています。
教材は、中学生向けに作成されていますが、高校生向け教材としても十分活用できます。講師の派遣は全国薬害被害者団体連絡協議会が行っています。
厚生労働省のWebサイトでは、冊子版と映像版の「薬害を学ぼう」がダウンロードできます。
参照:薬害を学ぼう(厚生労働省)
観光庁の「若旅★授業」
最近、若者の旅行離れが指摘されています。観光庁では、旅行市場の拡大や若者に良い旅行経験をしてもらうという観点から、若者旅行の振興の一環として「若旅★授業」を実施しています。
「若旅★授業」では、海外ボランティアや多数の海外旅行の経験を持っている人やバックパッカーなどを講師に招き、旅行の楽しさ、素晴らしさを探究学習を通して伝えています。
「若旅★授業」を受けるには、観光庁のWebサイトから応募できます。
参照:若者旅行の振興(観光庁)
公正取引委員会による「独占禁止法教室」
公正取引委員会では、独占禁止法の役割や市場経済の仕組み等について、高校生に分かりやすく説明する「独占禁止法教室」を開催しています。
探究学習の授業では、生徒が企業経営者の立場になって、ライバル企業よりもより多くの消費者に販売できるような販売方法等を考え、競争の必要性を学ぶシミュレーションゲームや、学習指導要領に準拠して作成した副教材や身近な事例などを用いて分かりやすく説明していきます。
将来の進路選択に役立たせることを目的としたキャリア教育の一環として、庁舎訪問学習の受入れも行っています。
参照:独占禁止法教室(出前授業)の御案内(公正取引委員会)