学習指導要領の改訂により、高等学校の「総合的な学習の時間」は、2022年度から「総合的な探究の時間」に変更されます。「総合的な探究の時間」では、生徒が主体的に課題を設定し、情報の収集や整理・分析をしてまとめるといった能力の育成を目的としています。
「総合的な探究の時間」ではどのような授業が行われるのでしょうか。これまでの「総合的な学習の時間」の授業を参考に見ていきましょう。
「総合的な探究の時間」では教科や科目等の枠を超えた課題に取り組む
「総合的な探究の時間」では、学習対象や学習領域が特定の教科や科目等にとどまらずに、横断的、かつ総合的でなければなりません。これは、教科や科目等の枠を超えて探究する価値のある課題に取り組んでいくということです。
下のグラフは、小学校、および中学校における、総合的な学習の時間の学習活動内容を示したものです。小学校では「地域や学校の特色に応じた課題」が最も多く、中学校では「職業や自己の将来」が最も多いという結果でした。
高等学校の「総合的な探究の時間」の授業においても、「相談的・総合的な課題」「地域や学校の特色に応じた課題」などを中心に取り組んでいくことになるでしょう。
具体的な探究課題は環境や伝統・文化、キャリアなどが多い
下のグラフは、小学校、および中学校における総合的な学習の時間の具体的な学習内容を示したものです。小学校においては「環境」「地域の人々の暮らし」「伝統と文化」が上位を占めていることがわかります。また、中学校においては「キャリア」「伝統と文化」「福祉・健康」などが上位を占める結果となりました。
高等学校の「総合的な探究の時間」における具体的な学習内容には、次のものが挙げられます。
- 自然環境とそこに起きているグローバルな環境問題
- 地域の伝統や文化とその継承に取り組む人々や組織
- 文化や流行の創造と表現
- 職業の選択と社会貢献及び自己実現
「総合的な探究の時間」で取り扱う内容の注意点
文部科学省は、「総合的な学習の時間」の実施にあたって次のような課題のあることを示しています。
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総合的な学習の時間の実施状況を見ると、大きな成果を上げている学校がある一方、当初の趣旨・理念が必ずしも十分に達成されていない状況も見られる。また、小学校と中学校とで同様の学習活動を行うなど、学校種間の取組の重複も見られる。こうした状況を改善するため、総合的な学習の時間のねらいを明確化するとともに、児童生徒に育てたい力(身に付けさせたい力)や学習活動の示し方について検討する必要がある。
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総合的な学習の時間においては、教科の補充・発展学習や学校行事などと混同された実践が行われている例も見られる。そこで、関連する教科内容との関係の整理、中学校の選択教科との関係の整理、特別活動との関係の整理を行う必要がある。
参照:総合的な学習の時間の現状と課題,改善の方向性(文部科学省)
総合的な探究の時間で取り扱う内容は、他の教科や科目で扱わない内容であれば何でもよい、というわけではありません。過去において、「総合的な学習の時間」としてふさわしくないと指摘のあった例は次の通りです。
- 修学旅行
- 生徒会活動
- 運動会の応援合戦
- 文化祭の準備活動
- 合唱コンクールのための練習
- 他教科の補完学習、補充学習
- 読書、漢字、計算、英単語練習などの自学の時間
- 卒業生を送る会に向けた準備活動
「総合的な探究の時間」においては、狙いや育てたい力を明確化した上で課題を設定することが大切です。また、大学や企業、研究機関といった外部団体と積極的に連携していくことも大切といえるでしょう。