大学のSDGsへの取り組みがわかる「THE大学インパクトランキング2019」が発表される

イギリスのタイムズ社が発表した「THE大学インパクトランキング2019」によると、世界の大学の中で、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の枠組みを通じて最も社会貢献している大学は、オークランド大学(ニュージーランド)であることがわかりました。2位はマクマスター大学(カナダ)、3位はブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)と続きます。日本の大学では、京都大学が最も高い48位で、東京大学(52位)と慶応義塾大学(91位)の3校が100位以内にランクインしました。

日本の大学や世界の大学では、SDGsの枠組みを通じてどのような社会貢献をしているのでしょうか。「THE大学インパクトランキング2019」の集計結果から見ていきましょう。

「THE大学インパクトランキング2019」のランキングの対象は11の開発目標

「THE大学インパクトランキング2019」は、SDGsの17の開発目標のうち、大学と関係のある11の開発目標についてランキングしたものです。ランキングの対象になった11の開発目標は次の通りです。

  • 目標3.すべての人に健康と福祉を
  • 目標4.質の高い教育をみんなに
  • 目標5.ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標8.働きがいも経済成長も
  • 目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標10.人や国の不平等をなくそう
  • 目標11.住み続けられるまちづくりを
  • 目標12.つくる責任 つかう責任
  • 目標13.気候変動に具体的な対策を
  • 目標16.平和と公正をすべての人に
  • 目標17.パートナーシップで目標を達成しよう

一方、ランキングの対象外になった開発目標は次の6つです。

  • 目標1.貧困をなくそう
  • 目標2.飢餓をゼロ
  • 目標6.安全な水とトイレを世界中に
  • 目標7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 目標14.海の豊かさを守ろう
  • 目標15.陸の豊かさも守ろう

これら6つの開発目標は、大学では達成に貢献できない、あるいは困難であるということではありません。今回のランキングで対象外になっているだけです。

世界ランキング1位はニュージーランドのオークランド大学

下の表は、「THE大学インパクトランキング2019」の上位20校と、大学が主に取り組んでいる開発目標を示したものです。1位のオークランド大学では、

  • 目標3.すべての人に健康と福祉を
  • 目標5.ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標11.住み続けられるまちづくりを
  • 目標17.パートナーシップで目標を達成しよう

の4つの開発目標について貢献して高い評価を得ることができました。

ランキング上位の大学が取り組んでいる開発目標は、「目標17.パートナーシップで目標を達成しよう」や「目標3.すべての人に健康と福祉を」などが挙げられます。

一方で、「目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「目標16.平和と公正をすべての人に」といった開発目標に取り組んでいる大学は多くないということがわかりました。

参照:University Impact Rankings 2019(Times Higher Education)

日本の大学では京都大学が1位

下の表は、「THE大学インパクトランキング2019」のうち、日本の大学の上位20校と、大学が主に取り組んでいる開発目標を示したものです。1位は京都大学、2位は東京大学、3位は慶応義塾大学という結果でした。

ランキング上位の大学が取り組んでいる開発目標は、「目標17.パートナーシップで目標を達成しよう」や「目標16.平和と公正をすべての人に」などが挙げられます。

一方で、「目標5.ジェンダー平等を実現しよう」「目標10.人や国の不平等をなくそう」といった開発目標に取り組んでいる大学は多くありませんでした。

参照:University Impact Rankings 2019(Times Higher Education)

※世界順位の列に「101-200」とあるのは、正確な順位は出ていないが、およそ101位から200位の間である、という意味です。「201-300」についても同様です。また、「301+」とあるのは、およそ301位以降である、という意味です。

下のグラフは、世界の大学と日本の大学における、SDGsの取り組み内容の比較を表したものです。

グラフを見ると、「目標17.パートナーシップで目標を達成しよう」「目標3.すべての人に健康と福祉を」「目標11.住み続けられるまちづくりを」の3つの開発目標では大きな差は見られません。

一方で、「目標4.質の高い教育をみんなに」「目標5.ジェンダー平等を実現しよう」「目標10.人や国の不平等をなくそう」の開発目標については、世界の大学では取り組んでいるものの日本の大学ではあまり取り組んでいないことがわかります。

日本の大学が世界の大学よりも積極的に取り組んでいると見られるのは、「目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「目標12.つくる責任 つかう責任」「目標16.平和と公正をすべての人に」の3つの開発目標です。

参照:University Impact Rankings 2019(Times Higher Education)

イギリスやオーストラリアの大学が上位を占める

下のグラフは、「THE大学インパクトランキング2019」の上位を占める大学の国・地域を表したものです。1位はイギリス(17校)、2位はオーストラリア(12校)、3位はアメリカ合衆国とカナダ(ともに8校)という結果でした。

参照:University Impact Rankings 2019(Times Higher Education)