SDGs(持続可能な開発目標)の進捗状況と今後の見通し

2015年、国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている持続可能な開発目標(SDGs)には、貧困や飢餓の解消、気候変動への対策、男女平等など、17の目標が掲げられています。国連(国際連合)では2019年に、これらの目標についての進捗状況や今後の見通しについて発表しています。どの程度進んでいるのか見ていきましょう。

目標1「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」

SDGs 1では、貧困をなくすことを目標に掲げています。国連の発表した統計データによると、2015年の貧困者割合は10%で、2030年には6%まで減少すると予測しています。減少はするものの「終止符を打つ」までには至らないという見通しです。貧困者の半数以上がサハラ以南アフリカに集中しており、地域への支援が求められます。

目標2「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」

SDGs 2の目標は飢餓をなくすことです。栄養不良に陥っている人は2015年の時点で7億8400万人で、2017年には8億2100万人に増加しているという調査結果が出ています。

目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」

国連の統計によれば、2000年から2017年までに、予防接種の普及によってはしかによる死者が80%減少、5歳未満の死者が980万人から540万人へ減少、サハラ以南アフリカにおけるHIV感染率が37%減少、とよい結果が出ています。

目標4「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」

SDGs 4は、質の高い教育の提供です。2019年の時点で、最低限の読み書きができない子どもは6億1700万人、読み書きできない成人も7億5000万人います。アフリカ南部やアジア中央部では学校施設が十分でなく、通えない子どもが多数いることが報告されています。

目標5「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」

南アジアにおける女児の児童婚リスクは2000年以降、40%まで低下しています。しかし、20歳から24歳までの女性の30%が、18歳未満で結婚しています。結婚している(パートナーのいる)女性のうち、6人に1人は相手から身体的暴力、あるいは性的暴力を受けているなど課題が残されています。

目標6「すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」

SDGs 6の目標は、安全な水とトイレの供給です。2017年時点、基本的な飲料水サービスを受けられていない人が7億8500万人います。また、世界の20億人が深刻な水ストレスを抱える国で生活しており、2030年までに7億人が水不足によって住む場所を追われる恐れがあると予測しています。

目標7「すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」

目標7は、持続可能で近代的なエネルギーへのアクセスを確保することです。世界人口の10人に9人は電力の利用が可能な環境にいるとしています。また、経済生産を得るための必要なエネルギーは年々減少の傾向にあります。一方で、再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みが遅れていることが報告されています。

目標8「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する」

目標 8は、働きがいと経済成長です。国連の調査によると、後発開発途上国のGDP成長率(2010年~2017年)は4.8%で、目標の7%には届かない結果となりました。

目標9「レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」

目標 9は、産業と技術革新の基盤づくりです。全世界における研究開発への投資額は、2000年に7390億ドルだったのが、2018年には2兆ドルと3倍近くに膨れ上がりました。欧米諸国の製造業付加価値は4938ドルで、緩やかであるものの年々増加の傾向にあります。一方で、後発開発途上国の製造業付加価値は114ドルと低い水準のままです。

目標10「国内および国家間の不平等を是正する」

国連の調査によると、安全で秩序ある正規移住に関する政策がある国は全体の76%、移民の権利に関する政策がある国は54%、移民の社会経済的福祉に関する政策がある国は57%という結果が出ています。多くの国が移住促進をしているものの、移民の権利・保護は十分でないようです。

目標11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」

目標11は、住み続けられる街づくりです。調査では、都市住民の10人に9人は汚染された空気の中で生活しており、4人に1人はスラムに類似した環境で生活しているということです。また、都市住民の半数しか公共交通手段への便利なアクセスができないという調査結果も出ています。

目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」

SDGs 12は、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を達成することを目標に掲げています。しかし、国連の調査によれば、全世界のマテリアルフットプリントは、1990年は430億トンだったのが、2017年には920億トンに拡大し、2060年には1900億トンに達すると予測しています。

目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」

目標13は気候変動への対策です。2018年の地球の平均気温は、産業革命前の平均気温を約1度上回っています。気候・地球物理関連の災害による死者数は、1998年から2017年までに130万人を上回ったと推計されます。

目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」

目標14は、海洋資源の保全です。世界の沿岸海域220か所のうち、104か所で沿岸水質が改善されたという報告があります。一方で、海洋酸性度が産業革命以前よりも26%上昇し、2100年には100%~150%上昇する見込みであると言われています。

目標15「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」

目標15は、森林資源の保全と陸上生物の保護です。生物種絶滅の危険性は年を重ねるごとに増加しています。生態系の変化により土地劣化なども見られ、地球の陸域面積の20%と、10億人の生活に影響が出るといわれています。

目標16「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」

人権擁護を訴える人、ジャーナリストなどがテロリストにより殺害されるという事件が後を絶ちません。目標16では、このような事件がなくなることを目標に掲げています。

目標17「持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」

目標17は、パートナーシップを活性化させて、積極的に開発途上国への支援を行うことを掲げています。2018年の正味ODA総額は前年比で2.7%減少、二国間ODA実質額は3%減少、対アフリカ援助額は4%減少と、十分な支援の行われていないことがわかります。

探究学習白書2020