世界の各地域におけるSDGs(持続可能な開発目標)の目標達成状況と課題

持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)は、2018年度版「持続可能な開発目標(SDGs)インデックス&ダッシュボード」を公開しました。「インデックス&ダッシュボード」は、SDGsの17の目標について世界各国の達成状況をまとめた報告書です。

達成状況を、アジアや欧州、北米といった地域ごとに見てみると、その地域の特性を活かした取り組みを知ることができたり、その地域で抱えている課題を知ることができたりします。

世界の各地域におけるSDGsの目標達成状況と課題を見ていきましょう。

資源国のある大洋州は気候変動の達成度が低い

下のグラフは、SDGsの達成度を地域ごと表したものです。表を見てみると、大洋州が全体的に達成度の高い地域であることがわかります。SDGsの17の目標のうち、「目標1.貧困」「目標3.保健」「目標5.ジェンダー」「目標8.経済成長と雇用」「目標10.不平等」「目標14.海洋資源」「目標16.平和」の達成度が1位でした。

参照:SDG INDEX & DASHBOARDS(SDSN)

※アジアは、日本や中国など19か国の平均値。アフリカは45か国、欧州は48か国、大洋州は2か国、中東は15か国、中南米は25か国、北米は2か国の、それぞれの平均値を集計したものです。

一方で、「目標13.気候変動」「目標15.陸上資源」の2つの目標については達成度が最下位でした。

大洋州の1つ、オーストラリアは世界有数の資源国です。石炭や天然ガスの採掘事業は国の基幹事業となっています。採掘時に発生するメタンは温室効果ガスの1つで、地球温暖化に大きな影響を及ぼしています。そのためオーストラリアでは、地球温暖化対策として石炭や天然ガスの採掘事業を中止して再生可能エネルギーに移行する動きが出ていますが、基幹事業を転換して取り組むまでには至っていません。

北米と欧州はSDGsの達成度が高い

北米は、SDGsの達成度の高い地域です。「目標2.飢餓」「目標4.教育」「目標7.エネルギー」「目標9.インフラ、産業化、イノベーション」「目標11.持続可能な都市」の5つの目標で達成度1位を獲得しています。最下位は「目標12.持続可能な消費と生産」の1つに留まっています。

欧州は、達成度1位を獲得したのは「目標15.陸上資源」の1つしかありませんが、全体的には他の地域よりも達成度が高くなっています。達成度最下位の目標は1つもありません。

中南米は気候変動への対策に高い評価を得ている

中南米は、SDGsの17の目標のうち、「目標6.水・衛生」「目標13.気候変動」「目標17.実施手段」の達成度が1位でした。

中南米の国アルゼンチンは、エネルギー資源の豊かな国です。天然ガスや石油は自給できるくらいの埋蔵量を誇っています。最近は、アンデス山脈から流れる水を利用した、水力発電へのシフトが進んでいます。これにより、目標6や目標13への評価が高くなっているといえるでしょう。

中南米は、「目標10.不平等」「目標16.平和」の達成度が最下位でした。目標16の指標となっている「10万人当たりの紛争関連の死者の数」や「 自身の居住区地域を一人で歩いても安全と感じる人口の割合」などは、他の地域よりも思わしくない数値が出ています。

アジア諸国で達成度1位は日本

日本を含むアジア地域は、達成度1位を獲得した目標は1つもなく、また達成度最下位は「目標17.実施手段」の1つのみという結果でした。

アジア諸国での達成度1位は日本(78.5)で、2位 韓国(77.4)、3位 シンガポール(72.0)と続きます。達成度の低い国は、インド(59.1)、ミャンマー(58.9)、パキスタン(54.9)でした。

参照:SDG INDEX & DASHBOARDS(SDSN)

アジア諸国と比べて日本の達成度が高かったのは、「目標16.平和」や「目標2.飢餓」「目標4.教育」「目標9.インフラ、産業化、イノベーション」などが挙げられます。一方、「目標12.持続可能な消費と生産」「目標5.ジェンダー」「目標17.実施手段」などは、達成度が低い結果となりました。

中東やアフリカ地域は達成度が低い

中東は、達成度1位を獲得した目標はなく、「目標5.ジェンダー」「目標6.水・衛生」「目標14.海洋資源」の3つの達成度が最下位でした。

国別の達成度を見ると、達成度が高かったのはイスラエル(71.8)とアラブ首長国連邦(69.6)でした。一方、達成度が低かったのはアフガニスタン(44.8)、イエメン(44.6)などでした。

7つの地域の中で、最も達成度の低かったのがアフリカです。「目標1.貧困」「目標2.飢餓」「目標3.保健」「目標4.教育」「目標7.エネルギー」「目標8.経済成長と雇用」「目標9.インフラ、産業化、イノベーション」「目標11.持続可能な都市」の9つの達成度が最下位でした。

アフリカ諸国がSDGsの目標を達成するには、日本をはじめとする先進国の支援が必要です。日本は、ODA(政府開発援助)や民間団体を通じてアフリカへの支援を行っています。例えば、保健・医療人材の育成やテロ対策、東アフリカや西アフリカへの経済広域開発支援などに取り組んでいます。これらの支援が成功すれば、アフリカ諸国のSDGsの目標も達成することができるでしょう。