日本における、SDGs 17の進捗を測るためのデータ収集方法、および算出方法

SDGs(持続可能な開発目標)は、17のゴールと169のターゲットから構成されています。SDGsの進捗を測るために、「グローバル指標」が設定されていて、その数は延べ244に及びます(重複を除くと232)。

各国は、グローバル指標を自国で使えるようにローカライズして、データの収集方法や使用する指標、算出方法などを設定します。そして、算出した数値がそれぞれのターゲットの内容を満たしているかどうかで目標達成度を測ることができます。日本では、グローバル指標をどのようにローカライズしているのでしょうか。また、目標達成度を測るためにどのようなデータを収集したり算出したりしているのでしょうか。いくつか例を挙げて見てみましょう。

ゴール1:あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

ターゲット1.5

2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。

グローバル指標

1.5.1 10万人当たりの災害による死者数、行方不明者数、直接的負傷者数

日本におけるデータの収集方法と算出方法

人口10万人あたりの災害によって死亡した、行方不明になった、又は直接被害を受けた者の数を測定する。消防庁「災害年報」における「死者」「行方不明者」「負傷者」の合計数を、直近の人口データ(国勢調査)で除したものに 100,000 を乗することによって算出する。

ゴール2:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

ターゲット2.2

5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。

グローバル指標

2.2.1 5歳未満の子供の発育阻害の蔓延度(WHO子ども成長基準で、年齢に対する身長が中央値から標準偏差-2未満)

日本におけるデータの収集方法と算出方法

WHO子ども成長基準で年齢に対する身長が中央値から標準偏差-2未満の5歳児の割合として、発育阻害割合=(WHO子ども成長基準で年齢に対する身長が中央値から2SD以下の者)÷(5歳未満の子どもの総数)×100 で算出する。

ゴール3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

ターゲット3.1

2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。

グローバル指標

3.1.1 妊産婦死亡率

日本におけるデータの収集方法と算出方法

年間の妊娠中または妊娠終了後満42日未満に、妊娠の期間及び部位には関係しないが、妊娠もしくはその管理に関連した又はそれらによって悪化した全ての原因による妊産婦死亡の数を出生10万人当たりで表す。人口動態統計 妊産婦死亡率=年間の妊産婦死亡数/年間の出生数×100,000 で算出する。

ゴール4:すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

ターゲット4.2

2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。

グローバル指標

4.2.2 (小学校に入学する年齢より1年前の時点で)体系的な学習に参加している者の割合(性別ごと)

日本におけるデータの収集方法と算出方法

社会福祉施設等調査や人口推計などのデータをもとに、5歳段階における幼稚園の在籍者数と保育所の在籍者数、幼保連携型認定こども園の在籍者数の総数を、同年齢の人口総数で除し、その結果に100を乗じて算出する。

ゴール5:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う

ターゲット5.4

公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。

グローバル指標

5.4.1 無償の家事・ケア労働に費やす時間の割合(性別、年齢、場所別)

日本におけるデータの収集方法と算出方法

社会生活基本調査から、(家事労働に費やされた1日あたりの総平均時間(週全体) + 介護労働に費やされた1日あたりの総平均時間(週全体))÷24×100で算出する。

ゴール6:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する

ターゲット6.3

2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加させることにより、水質を改善する。

グローバル指標

6.3.1 安全に処理された排水の割合

日本におけるデータの収集方法と算出方法

汚水処理人口普及率=(下水道処理人口+農業集落排水等処理人口+合併処理浄化槽等人口)/総人口(住民基本台帳人口)でして算出する。

ゴール7:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する

ターゲット7.3

2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。

グローバル指標

7.3.1 エネルギー強度(GDP当たりの一次エネルギー)

日本におけるデータの収集方法と算出方法

エネルギー強度(EI)=(一次エネルギー国内供給量(ペタジュール))÷(実質GDP(1 兆円))で算出する。一次エネルギー国内供給量は総合エネルギー統計を参照、実質GDPはEDMCエネルギー・経済統計要覧を参照する。

ゴール8:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

ターゲット8.1

各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。

グローバル指標

8.1.1 一人当たりの実質GDPの年間成長率

日本におけるデータの収集方法と算出方法

国民経済計算、および国勢調査、人口推計を使用し、一人当たりの実質 GDP = 実質 GDP ÷ 国内総人口で算出する。

ゴール9:強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

ターゲット9.3

特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。

グローバル指標

9.3.1 産業の合計付加価値のうち小規模産業の占める割合

日本におけるデータの収集方法と算出方法

経済センサスより、小規模企業の付加価値額÷全企業等の付加価値額×100で算出する。

ゴール10:各国内及び各国間の不平等を是正する

ターゲット10.4

税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。

グローバル指標

賃金及び社会保障給付から成る GDP 労働分配率

日本におけるデータの収集方法と算出方法

内閣府の国民経済計算より、労働分配率= 雇用者報酬 ÷ 国民所得(要素費用表示)*100を算出する。

ゴール11:包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する

ターゲット11.6

2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。

グローバル指標

11.6.1 都市で生み出された固形廃棄物の総量のうち、定期的に収集され適切に最終処理されたものの割合(都市別)

日本におけるデータの収集方法と算出方法

一般廃棄物処理事業実態調査や産業廃棄物排出・処理状況調査などから、(管理された施設で収集・処理された都市の固形廃棄物)÷(都市で生み出された固形廃棄物の総量)×100で算出する。

ゴール13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

ターゲット13.1

全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。

グローバル指標

※指標1.5.1と同じ

日本におけるデータの収集方法と算出方法

※指標1.5.1と同じ

ゴール15: 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

ターゲット15.1

2020 年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。

グローバル指標

15.1.1 土地全体に対する森林の割合

日本におけるデータの収集方法と算出方法

森林資源現況調査により、(総森林面積)÷(総土地面積)×100で算出する。

ゴール16:持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

ターゲット16.1

あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。

グローバル指標

16.1.1 10 万人当たりの意図的な殺人行為による犠牲者の数(性別、年齢別)

日本におけるデータの収集方法と算出方法

犯罪統計規則より、1年間(暦年)に都道府県警察で認知した殺人事件の死者数を、人口で割って、算出する。

ゴール17:持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

ターゲット17.1

課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。

グローバル指標

17.1.1 GDPに占める政府収入合計の割合(収入源別)

日本におけるデータの収集方法と算出方法

国民経済計算より、GDPに占める政府収入合計の割合(収入源別) = 政府収入(収入源別) ÷ GDP × 100を算出する。

出典:SDGグローバル指標(SDG Indicators)(外務省)