2018年に改訂され順次移行が予定されている高校の学習指導要領では、従来の「総合的な学習の時間」に替わる形で「総合的な探究の時間」という科目が設けられています。
「探究」は地歴や数理など複数の科目にも導入されている、新学習指導要領の中心と位置づけられるキーワードです。「総合的な探究の時間」とは、具体的には何を学び育む時間なのでしょうか。
新「学習指導要領」の中の「総合的な探究の時間」の位置づけ
改訂された学習指導要領では「第4章 総合的な探究の時間」という項目が用意されています。
(高等学校の新学習指導要領は文部科学省よりPDFファイルの形で全文が公開されています)
「総合的な探究の時間」に関する項目は、PDFファイル全650ページのうち4~5ページ相当と、分量は決して多いわけではありません。とはいえ、国語や数学といった科目は第2章の下位の「節」として扱われている中、「総合的な探究の時間」は「第4章」が丸ごと充てられています。章クラスの扱いです。
総合的な探究の時間の目標
新学習指導要領の第4章「総合的な探究の時間」の冒頭には、「目標」として、次のような記述が掲げられています。
第1 目標
探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自
己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質
・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 探究の過程において,課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け,
課題に関わる概念を形成し,探究の意義や価値を理解するようにする。
(2) 実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし,自分で課題を立て,
情報を集め,整理・分析して,まとめ・表現することができるようにする。
(3) 探究に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,
新たな価値を創造し,よりよい社会を実現しようとする態度を養う。
ちなみに、新学習指導要領において「探究」という言葉はすでに周知の概念(というより一般的な日本語の語彙)として扱われており、意味解説や定義づけなどは特に行われていません。
総合的な学習の時間の目標との違い
では、従来の「総合的な学習の時間」とあらたな「総合的な探究の時間」とでは具体的にどのような点が違っているのでしょうか。これは新旧の(「学習」と「探究」の)目標を比較してみるとわかりやすいかも知れません。
「総合的な学習の時間」の目標
探究的な見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,よりよく課題を解決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
「総合的な探究の時間」の目標
探究の見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
並べてみると「記述順序が微妙に違っているだけでは?」とツッコミたくなりますが、とりもなおさずそれが「学習」と「探究」の違いということでしょう。
「総合的な学習の時間」では、「課題解決を通じて自身の在り方を見つめる」あるいは「課題解決にいそしみつつ自身の在り方を見つめる」という部分に焦点が当てられていたと解釈できます。そして「総合的な探究の時間」では、自身の在り方を見つめることも重視しつつ、「課題の発見と解決」の方に焦点を当てていると解釈できます。
「課題を解決し」が「課題を発見し解決し」と変更されている点も見逃せません。新たな「探究学習」においては課題を自ら見つけることも肝要であるということが明確に打ち出されているわけです。