「2019 Global 100」にランクインした日本企業のSDGsへの取り組み内容

カナダのコーポレートナイツ社は2019年1月、世界で最も持続可能な企業100社をまとめた「2019 Global 100」を発表しました。2019 Global 100は、世界各国の大企業の約7500社を対象に、環境や社会、ガバナンスなどの指標に基づいてランキングしたものです。

日本からは、エーザイ(73位)、武田薬品工業(78位)、横河電機(82位)、積水化学工業(89位)、花王(92位)、トヨタ自動車(95位)、コニカミノルタ(96位)、パナソニック(100位)の8社が100位以内にランクインしました。これらの企業は、どのような持続可能性のある活動を行っているのでしょうか。見ていきましょう。

ランクインした8社は「SDGs12(生産・消費)」と「SDGs13(気候変動)」に取り組んでいる

下の表は、「2019 Global 100」にランクインした日本企業8社の、SDGsへの取り組み内容を示したものです。

SDGs3「すべての人に健康と福祉を」(保健)SDGs12「つくる責任・使う責任」(生産・消費)SDGs13「気候変動に具体的な対策を」(気候変動)の3つの目標については、8社すべてが取り組んでいることがわかります。また、SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」(イノベーション)もほとんどの企業が取り組んでいます。

一方で、SDGs2「飢餓をゼロに」(飢餓)SDGs4「質の高い教育をみんなに」(教育)SDGs16「平和と公正をすべての人に」(平和)に取り組んでいる企業はあまり多くありませんでした。

参照:2019 Global 100

SDGsへの取り組み内容

エーザイ

エーザイ株式会社は医薬品メーカーです。テレビのコマーシャルなどで流れている「ヒューマンヘルスケア(hhc)」の言葉は、エーザイの企業理念です。エーザイでは、医薬品の提供はもとより、医薬品アクセス向上への取り組みや、地域医療に対するソリューションの提供など、さまざまな活動を行っています。

エーザイは、日本の企業ではあまり取り組んでいない、貧困問題に取り組んでいます。エーザイでは、開発途上国・新興国への医薬品アクセス向上への取り組みを通じて、健康福祉の向上、中間所得層の拡大による経済成長への貢献をめざす、としています。また、SDGs17(実施手段)では、重点領域でのイノベーション創出に向けた企業、アカデミアとのパートナーシップや、医薬品アクセス拡大に向けた国連機関、非営利組織、研究機関、アカデミア等とのパートナーシップをめざす、としています。

参照:SDGsへの取り組み(エーザイ)

武田薬品工業

武田薬品工業は、製薬会社です。ランクインした日本企業の中で、唯一SDGsの17の目標すべてに取り組んでいます。日本の企業があまり取り組んでいない貧困問題では、サハラ以南のアフリカ諸国における保健システムの強化や、南スーダン・シリア難民を対象とした包括的保健プログラムなどに取り組んでいます。

参照:SUSTAINABLE VALUE REPORT 2018(武田薬品工業)

横河電機

横河電機は、国内最大級の計測・制御機器メーカーです。SDGs5(ジェンダー)やSDGs8(成長・雇用)の面では、マネージャーに占める女性比率12%、障害者雇用率2.3%などを目標に掲げています。同社のオフィスや工場の温室効果ガス(GHG)については、パリ協定が目指す2℃目標を踏まえた目標を設定しています。水資源の効率的利用施策の強化や、エネルギー使用量18%削減、温室効果ガス排出量34%削減などに向けた取り組みを行っています。

参照:サステナビリティ中期目標(横河電機)

積水化学工業

積水化学工業は、住宅建材やプラスチックなどを製造する、樹脂加工メーカーです。積水化学工業では、SDGsにおいて提唱されている、「地球環境の向上」「世界のひとびとのくらしの向上」をビジョンに掲げ、事業を通じて貢献するとしています。SDGsの課題解決への貢献度の高い製品を環境貢献製品と認定して、「地球環境の向上」(SDGsの6、7、12、13、14、15)への貢献を高めるべく、その創出・市場拡大に努めています。2017年度からは、業容や社会環境の変化を鑑みて、「世界のひとびとのくらしの向上」(SDGsの3、9、11)への貢献を高める製品の創出・拡大に取り組んでいます。

参照:SDGsへの取り組み(積水化学工業)

花王

花王は、洗剤やトイレタリーの国内シェア1位を誇る化学メーカーです。花王では、SDGsについて環境や健康、衛生、高齢化、コミュニティとのパートナーシップ、健全な事業活動、ダイバーシティ&インクルージョン推進などの面から取り組んでいます。具体的には、CO2排出量の削減率35%、水使用量の削減率40%、廃棄物等発生量の削減率33%などを目標に掲げています。また、健全な事業活動では、BCGテストの実施率100%、重大なコンプライアンス違反件数0件を目標に取り組んでいます。

参照:花王統合レポート2019(花王)

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、日本を代表する自動車メーカーです。SDGsへの取り組み例としては、交通死傷者数低減のために累計800万台の車に安全装備「Toyota Safety Sense」の装着が挙げられます。また、持続可能な街づくりやモビリティ向上のために、ベトナムにおいてトヨタモビリティ基金による豊かなモビリティ社会の実現とモビリティ格差の解消に取り組んでいます。気候変動の問題に対しては、2030年までに電動車の販売550万台以上(EV・FCVは100万台以上)を目指して開発に取り組んでいます。

参照:Sustainability Data Book 2018(トヨタ自動車)

コニカミノルタ

コニカミノルタは、電気機器メーカーです。コニカミノルタでは、経営戦略と親和性の高い分野を社会貢献の注力分野としています。1つ目は、健康・医学です。すべての人に健康を届けるため、病気の早期発見の大切さ、ひいてはQOL(Quality of Life、生活の質)の向上に向けて、技術を活用し、高齢化する社会と働く女性の健康に貢献できるように取り組んでいます。2つ目は、環境 ・製造メーカーとして、地域社会や社外のパートナーシップを通じてより大きな環境負荷の低減に取り組んでいます。3つ目は、学術・研究・教育です。コニカミノルタでは、学会や公益財団法人コニカミノルタ科学技術振興財団を通して技術進歩の貢献に取り組んでいます。

参照:社会貢献活動(コニカミノルタ)

パナソニック

パナソニックは、世界に知られる大手電機メーカーです。パナソニックでは、クリーンなエネルギー社会づくりのために、クリーンなエネルギーの創出・活用を進め、クリーンなエネルギーでより良く快適にくらせる社会の実現を目指しています。また、安全な交通社会づくりのために、カメラ・センシング技術や画像処理技術を用いた、先進運転支援システム(ADAS)の開発、提供を行っています。SDGs8(成長・雇用)の面では、強制労働、児童労働防止の取り組みや外国人移民労働者を含む労働者の権利保護、労働安全衛生管理などに取り組んでいます。

参照:社会課題への取り組み事例(SDGsとの関連)(パナソニック)