大学入試向けの学習塾の中には「AO入試対策」に力を入れている塾もあります。
具体的な対策のノウハウ(AO入試必勝法)は塾ごとに違うでしょうし、表面的に知れるものでもないでしょう。とはいえ各塾が掲げている「AO入試対策」の理念を並べて比べてみると、ある程度の要素が絞り込めます。
AO入試の対策として塾が大事にしている要素を眺めると、自ずと「AO入試において大切なこと・重視すべきこと」も見えてきます。これはAO入試を検討する最初の一歩としては中々に有意義な情報として使えそうです。
AO入試対策で塾が注力するのは「自己アピール力」
学習塾のAO入試対策コースで主に行われる対策講座は、一般的な受験対策の講座・講習とは内容が大きく異なります。一言でいえば、塾のAO入試対策講座は、「AO入試で最大限に効果的に自己アピールするためのノウハウを身に着ける」という方向に特化しています。
普通の塾の授業は、「理解を確かなものにする」とか「より多く効果的に憶える」とか、あるいは「試験に出るところだけ効率的に勉強する」といった部分が強みになるといえます。これはつまり「インプット」型の勉強です。
塾がAO入試対策として行うことは、むしろ「アウトプット」の方法を学ぶということです。外部から知識を得るというよりも、すでに自分の中にある思い・考えを外部に出す、という部分が重視されるわけです。
これほど入試対策に求められるものが違っているとなると、AO入試に特化したコースが用意されるのも納得です。
AO入試対策では言語化、文章化、口頭伝達のスキルが求められる
AO入試対策コースの中で具体的にどのようなことを行うのか? これは塾によって違う部分なので一概にはいえませんが、ひとまず「小論文対策」や「面接対策」、および「志望理由書の作り方」などは多くの塾が主なAO入試対策メニューとして挙げている部分といえます。
「小論文対策」は、小論文試験に求められる論述テクニックを強化するメニューといえます。小論文では《所定の時間内に書く》《所定の字数の範囲内で書く》《客観的に論述を構成する》といったテクニックが求められます。そうした「書き方」を踏まえた上で、自分の見解を伝える・アピールする必要があります。
「面接対策」は、相手と面と向かって口頭で自分の意見や思いを伝えるために求められるテクニックを強化するメニューといえます。小論文では「言葉の正確さ」や「文章構成の的確さ」などが求められますが、面接では考えをただ言葉にするだけでなく、「熱意を持って」「熱意が相手に伝わるように」伝える必要があります。これは細やかなノウハウと、それに慣れがなければ中々うまくできない部分です。
「志望理由書対策」は、自分の志望動機・志望理由を、相手の心を掴めるように最大限にアピールしつつ作成するテクニックを強化するメニューといえるでしょう。自分が抱いている夢、思い描いている将来像、それを実現するためにやりたいこと・やっていること、それに、夢を実現するために大学で何を学びたいのか、といった部分をこれでもかというくらいアピールする部分です。
志望理由対策はノウハウやテクニックの獲得もさることながら、自分の志望理由を見つめ直して練り直す、志を確かなものにする、という精神的な錬成の訓練でもあるでしょう。改めて「誰にも負けない熱意を抱いている」ことを確認する必要があります。
AO入試に求められる素養は、論述も口頭伝達も熱意のアピールも含めてほぼ丸ごと「プレゼンテーション」に求められるスキルと共通しています。AO入試に求められる各スキルを理想的なレベルで身につけられたなら、進学しても社会人になっても満足なプレゼンを実現できるようになります。あるいは、少なくともハイレベルなプレゼンを実現しやすい素養をすでに得ていることになるでしょう。