高校の探究学習の授業における、学習達成度の設定方法

高校の探究学習科目「総合的な探究の時間」では、生徒自身が探究の見方や考え方を働かせて、横断的、かつ総合的な学習を行うことを通して、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質、能力の育成を目指しています。

生徒は授業において、自ら課題を設定したり、そこにある具体的な問題について情報を収集したりして情報を整理、分析します。そして、明らかになった考えや意見をまとめて発表します。このような一連の学習過程を終えたら、また新たな課題を見付け、更なる問題の解決を始めるといった学習活動を繰り返していきます。

探究学習には「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の4つのプロセスがあります。探究学習における高校生への評価は、それぞれのプロセスにおける学習達成度をチェックすることが大切です。探究学習の授業では学習達成度をどのように設定すればよいのでしょうか。

課題の設定

課題の設定について、高校の学習指導要領では次のように規定しています。

課題の設定においては,生徒が自分で課題を発見する過程を重視すること。

生徒は、課題を自分自身で見つけ、設定することが求められます。また、単に見つけるだけではなく「過程」を重視しなければなりません。課題と自分自身がどのように関わりを持っているのか、また実社会や日常生活とどのような関わりがあるのか、といった設定理由を明らかにした上で課題を見つけることが大切です。

「課題の設定」における学習達成度の指標

  • 複雑な社会状況を踏まえて課題を設定することができる
  • 仮説を立て、それに適合した検証方法を明示した計画を立案することができる

情報の収集

情報の収集では、書籍やインターネットを活用したり、専門家に問い合わせをしたりして、幅広く情報を取り寄せる力が求められます。高校生であれば、インターネットからの情報収集は、そんなに難しい作業ではないでしょう。数多くある情報から取捨選択する力、情報源の選び方なども学習達成度を測る上で大切な項目です。

「情報の収集」における学習達成度の指標

  • 目的に応じて臨機応変に適切な手段を選択し、情報を収集することができる
  • 必要な情報を広い範囲から迅速かつ効果的に収集し、多角的、実際的に分析することができる

整理・分析

整理・分析の整理では、収集した情報が課題解決に必要かどうかを判断する力を測ります。情報を並べ替えたり、要素ごとに分類したりする能力を育成します。分析では、整理した情報をもとに比較するなどして情報の傾向を読み取ったり、因果関係を見つけたりする力を測ります。

「整理・分析」における学習達成度の指標

  • 複雑な問題状況における事実や関係を構造的に把握し、自分の考えを形成することができる
  • 視点を定めて多様な情報から帰納的、演繹的に考察することができる
  • 事象や事象間の関係を比較したり、複数の因果関係を推理したりして考えることができる

まとめ・表現

まとめ・表現では、整理・分析した情報をもとに、自分自身の意見や考えをまとめて表現します。相手にわかりやすく伝わるようにまとめる力や、発表会での話し方なども測定の対象です。また、他者の意見を聞いたり、情報交換したりすることによって新たな課題を見つけ出す能力も養います。

「まとめ・表現」における学習達成度の指標

  • 相手や目的、意図に応じて手際よく論理的に表現することができる
  • 学習の仕方や学習や生活に生かそうとする進め方を内省し、現在及び将来の学習や生活に生かそうとする

探究学習の授業における生徒の学習達成度

下のグラフは、「総合的な探究の時間」、および「総合的な学習の時間」における、高校生、および中学生の学習達成度を表したものです。学習達成度が最も高かったのは、「学習の仕方や学習や生活に生かそうとする進め方を内省し、現在及び将来の学習や生活に生かそうとする」(60.3%)でした。一方、学習達成度の低かったのは「視点を定めて多様な情報から帰納的、演繹的に考察することができる」(48.1%)でした。

プロセス別の学習達成度では、「まとめ・表現」が最も高く、「整理・分析」が最も低い結果でした。

出典:探究学習白書2020

 

下のグラフは、探究学習において授業がスムーズに進行したかどうかを4つのプロセスに分けて示したものです。4つのプロセスとも、「スムーズに進行した」、あるいは「どちらかというとスムーズに進行した」の回答が多く寄せられており、「整理・分析」の回答率がやや低い結果となりました。

出典:探究学習白書2020

※本調査のデータは、中学校、および高等学校の教員に対するアンケート調査に基づいて算出したものです。